ネット上で欧米の人権意識の高さに対する記事や意見を目にすることが多くあります。
差別を厳しく取り締まる法律があり、労働者を守る法律も強く仕事より人生を重視する。
そんなイメージがあって、日本は遅れている、見習うべきだと言う論調がほとんどです。
では何故欧米では人権意識が高い法律がきちんと整備されているのでしょうか?
それは逆説的に人権侵害が多く行われるからということです。
冒頭にあるのは長期バカンスのイメージがあるフランス。
そのフランスの企業で、自殺者が連続したというニュース。
社風の過酷さを伝えています。
そしてコロナウイルスの広がりとともにアジア人が差別されたというニュース。
日頃から欧米は人権意識が高いと思っている人にはとても意外に思えるのではないでしょうか。
なんだよ結局欧米人も差別ヤローばっかじゃん、みたいなコメントを多く見かけました。
記事中でも「人権先進国なのに」という風に書かれていますが、その人権先進国は人権侵害がたくさんあったからこそ、それを問題視して規制してきたという積み重ねの結果なのです。
病気があったから薬を作ったというようなものです。
日本より進んでいるのは人権意識の前提にある「人間は放っておくと他者の人権を侵害してしまう」という認識があることなのです。
欧米が自由な社会を求めたのは不自由な時代があったからであり、間違ったことをする者も中にはいるという経験に基づいて法律で社会を管理しているのです。
なので「欧米が人権意識高い人ばかり」というのも「結局白人様はアジア人を下に見ている」も極端な印象でしかなくそれ自体が差別に繋がりかねない先入観です。
実際は意識の高い人と低い人の差が激しくばらつきがある、つまり色々な人間がいるということです。
これは言われてみると当たり前なんですが、自分の思考の範疇を超える事象はなかなか認識できにくいのも人間です。
でも全員の考えが想像できなくても「思想には多様性がある」という前提を持っていることは大切だと思います。
今回のコロナ対策では「海外は日頃自由を謳っているのにロックダウンを強制できる法律があって、不自由そうな日本では自粛要請しかできない」という点に疑問を持った人もいるのではないでしょうか。
でもそれも人間に対する認識があったからこそです。
欧米では放っておいたら出歩く奴が絶対にいる。ということがわかっているのです。
だからこそ有事の際に社会を守るため、同じ行動を強制するのです。
しかしその思想の多様性は別の形で現れ始めました。
ロックダウン反対のデモが起きています。
やはりこれも自由と多様性のある思想を持った国では当然の動きです。
死者が4万人いてもこういうことをするのです。
日本人は「こんなに死人出てたら普通やらないでしょ」と考える人がほとんどだと思います。
そう日本は「普通こうだろ」の共通認識の多さで社会を維持しているのです。
それに由来した同調圧力があって日本では自粛要請だけで外出をほとんど抑え、感染拡大を防ぐことができています。(もちろん元々の清潔な生活習慣も大きいです)
もし日本が自由で多様性のある社会を目指すならば、今後は有事の際に強制力は必要になってくるでしょうし、法律もその前提で作らなければならないことが多くなるはずです。